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SS
京都の冬は厳しい。
ハー・と拭きかけた息は白く、一瞬だがそれでも暖かく自分を包む。
寒いことをしばれる、と表現する地方があるが、
京都の冬は文字通り縛られる程空気が凍て付く。
肺に入るたび痛い。
風が吹けば息を詰める。大きく吸えば喉が凍える。
慎重に扱ってなお、ゆっくりゆっくり熱を奪う。
それでも郷里の冬は好きだ。

研ぎ澄まされる。全て。


「ぼぉーん!」
居間の方から涙まじりな弟の声がする。
あぁ今年もか、と気持ち口角を持ち上げた。
短い冬休みを予想通り遊んで過ごしてしまった廉造が、
坊に宿題を見せてと今年も泣きつく。
坊は冷たくあしらうが、引き下がらないのも毎年の事、
それでも写させるわけじゃなく、子猫丸と2人、コタツにこもり傍で教えるのも恒例行事。

「…さむ、っ、」
寺の見回りに行く玄関先で靴を履きながら、
うっかり無神経に息を吸って肺が絞られむせるのも、


また恒例のことだった。


「柔兄どこ行くん?」
デート?とひょっこり顔を出した派手な髪の方の弟は
すっかり私服に半纏で外出する気配も無い。
「アホか、寺見に行くんや。昨日の夜雪降ったやろ」
解けてなかったら参拝客が転ぶかもしれん
「げぇ、わざわざ山行くん?毎年やけど変態やな」
「ほお金造、一緒に行くか?」
勘弁してやー・半纏と浴衣の女袖のように
ヒラ付かせて金造は奥へ引っ込んだ。
ふうと息を1つ。

今頃母親がこしらえたぜんざいを廉造が運んでいるに違いない。
子猫丸と、勝呂の分と、
当然のように3つ持って。

(…俺は子供か)

いつも3人セットだった。
お守りせえよと言っている。父親からも言われている。
当然だ。同じ年なのだ。
何も不自然じゃない。

ただ、悔しいだけだ。
年甲斐も無く。

傍に居たいだけだ。
理由も言訳もなく。

薄手のマフラーを巻き、鼻までうずめる。
(どうしようもないわ)
主と従であることが決まっている。
見上げ恋がれるだけでなく、1番傍にも居れぬとは。

10も年下に何を言っていると理性が呆れる。
弟相手にムキになるなと常識が囁く。

竜士は座主で、自分は僧正、
いづれ最も傍に在る。


それでも今、傍に居たいのだ。

ただ、それだけなのだ。







あともう少しだけ、高望み
低すぎるで、と彼は笑った



-柔造、デートなん?
-な、ぼ、ぼん!ちゃいますよ!寺見てくるだけです!
-ふーん…。じゃぁ上着取って来るわ。
-え?
-これでデートやろ、俺と。


ほんの少しで、彼の世界は華やぐのだ。
Secret

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