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SS
これはお前のもんや・と。

そう言われて育ってきたんや。


全部俺ンもんにしたなるんは、




当然やろ?






飴か夢




志摩柔造という男は、
群を抜いて自分に甘かった。

志摩柔造という男は、
自分にいっとう甘かった。

子供好きという事もあるとは思うが、
自分と同じ年には、血縁である5男坊や三輪の忘れ形見もいるというのに、
この男は、およそ自分を優先していた。

”坊、柔造は、坊のためにおるんですえ”

そう言って十も離れている自分に対し敬語を使い、
何の抵抗もなく頭を垂れた。

物心ついたときからこうなのだ。
多少他とは違うだろうという事は感じていても、それが普通ではないという追い詰められた認識は無かった。
むしろ、トップでは無くとも、常に成績優秀者に数えられる学力や
温厚で人当たりの良い性格と、天性の兄貴性もあって、
いくつの時代でも人の輪の中にいる柔造が、自分を最優先にしてくれることは、
寺のこともあって傷ついていた幼少時代の自分にとって他に無い程の優越感であった。

成長するに連れ、座主と僧正の関係を知った時は、
そりゃあ多少はがっかりもしたが、同じ僧正血統でも宝条の長女の自分に対しての冷たいこと。
そう考えるとやはりあの男は甘い。

本人の意思で、自分に甘い。



(…って。これも希望的観測なんかもしれんな。)
本人に確かめたわけではないのだから。

柔造は昔から異性にモテた。
今思い返せば、きっと中学にあがったあたりから、もう”カノジョ”なる特定の女子が居たこともあっただろう。
自分と同じ年である廉造も、中学にあがった途端に『中学デビューや!カノジョ欲しい!』と毎日わめいていた。
廉造は自分が時期座主である自分と同じ年ということもあり、柔造からいろいろと言われている節もあって、
あまり自分から近づいたりはしないが、やはり憧れの念はどこかにあるのだろう。
彼の思い描く『薔薇色の学生生活』は、彼の兄達の影響を受けているに違いない。
本人達が望んでいたかは別として、その位柔造も金造も、傍目に羨ましい生活を送っていた、のだと思う。
(俺は3つとか4つやからな、さすがに覚えてへん…)

記憶にあるのは、うだるような夏の暑さ。
蝉の声と、遠く鳴る風鈴の音。
自分が6つか7つ、寺の状況や周囲の眼を肌で感じていた時期。

1人ぼっちの帰り道。
アスファルトに近いところがゆだったように揺らぐ。
その先に見えた、若き志摩の僧正。
嬉しくなって駆け出す。

『じゅうぞ…!』


呼んだ声に振り向く柔造と、
見知らぬ女の人
(実際は女の子だったのだろうが、当時の自分には女の人に見えた。)

急に張り付いたように足が止まる。
ここでも自分は、蚊帳の外なのか。
きつく俯きかけたとき、


『坊!』


おかえりなさい坊!と、満面の笑みで柔造が手を振る。
立ち止まった自分を心配してか、小走りに近づいてきて膝を折り、
自分の様子を伺ってきた。

『坊、なんぞしました?嫌なことでもあったんです?』
『ッ!』

嫌なことは沢山あった。
学校でも近所でもいっぱい陰口を言われた。
けど1番嫌だったのは、柔造の横に女の人がいたことで、
けどそんなんはすぐに吹き飛んだ。

『ぼ、ッわぁ!』
汗ばんだ体のまま、抱きつく。

『何もない!なぁ柔造、抱っこして!』
『えぇですよ~、よっと!』

汗と香の匂いに混じって、柔造の匂いがする。
抱き上げられた柔造の肩越し、その向こうにいる、”カノジョ”
その人と目があった瞬間、俺は、



(俺はびっくりする位、満たされた気分になったんや)

今思えば、紛れも無い独占欲だった。
柔造にはもう俺しか見えてない。
お前なんかもう知らんって事や・と。

結局その時の女の人が、カノジョだったのか、ただのファンだったのか、
はたまた全然関係の無い人であったのか、詳細も真相も分からない。
ただ、自分はその時、生まれて初めて、嫉妬と独占欲を知った。


憧れやった。
いつでも俺を守ってくれた。

誰が見ても非の無い人間が、
他でもない、自分にだけ忠誠を近い、自分の為に生き、

自分の為に死ぬのだと、


まっすぐ目を見て言い切った。
度越した想いは、たとえそれが熱をはらんでいなくても俺を満たすには十分で、
だんだんそれが蓄積し、沈殿し、少しづつ形を変えていく。

ずっとずっと、そうだった。
生まれた時から、

きっと、死ぬまでずっと。

いっそ妄信的やな・と、どこか遠い思考の中でぼんやりと考える。
自分の中に植えつけられた彼からの忠誠心を勘違いしていると気付いたときにはもう遅い。

柔造が正式に祓魔師として京都に戻り、
一番隊隊長として名実共に志摩の跡取りとして定着する頃には、

志摩柔造は、自分だけのもので無ければ気が済まなくなっていた。




(ガキの我儘やな)
深夜、あとは布団にもぐりこんで幸せな眠りに入るだけという時に限って、
今までのことばかりが思い起こされる。
横では、昏睡に近い深さで眠る、志摩柔造。

欲しいというより、失うのが恐かった。
全てが、自分のものだったのだ。
それが欠けるのが恐ろしかった。

たとえそれが、目線の1つであっても。

自分だけのものであって欲しかったのだ。


忠誠と未来だけでは飽き足らず、
心も身体も、

頭のてっぺんから、つま先まで、全部。

想いの方向性が違っていることに気付き始めたと同時に聖十字への
入学が決まり、入寮することでしばらくは落ち着いていた。
京都でのいざこざを片付けた事をきっかけに前よりは実家に顔を出すようになった頃、
任務で腕を怪我した柔造を見舞った際に見合いの話があったことを
聞かされて爆発した。
(それが執着やと、思っとったんや)
だからこそ、大して相手を考えずに、ことを進めた。
自分しか見てなかった彼が、いづれ他の女を見て愛し、
慈しむ姿が認められないだけだと、受け入れたくないだけだと。
だから、一生忘れられない傷を付けてやれば、
自分は満足出来ると思ってた。
最低だとわかっていたが、その時の自分にはどうしようも無かったのだ。
その位、良くも悪くも柔造は、ある意味自分にとって全てだった。

「…ン」
小さく寝返りを打った柔造のむき出しの肩に布団を引き上げて被せてやる。
普段より心なしか幼く見える寝顔を堪能できるのは、
自分だけの特権だ。今も、これからも。
背筋を走る優越感に任せて目を細めて緩んだ口元のまま、
冷えた肩から鎖骨、首筋へと唇を落としながら、自分も布団へと戻る。

「ぼ…ん、?」
「おん、ここにおる。もう眠り…」

寝ぼけた顔でうっすらと呟いた名前すら自分であることにまた満たされる。
後ろから抱きしめた方がぴったり密着出来るのだけど、
今日は顔を見て眠りたい。
正面から柔造の身体に腕を回して眠りに付く。
鼻先に1度だけ口付ければ、相手がゆったりと笑った気がして。
全身が震える程愛しくなって、涙が出た。
相手が寝入ったことを確認してから、小さく「好きや」と告げる。
臆病者の自分を嗤った。

癇癪のまま身体を暴いて、誰のものやと言わせ恋わせた。
散々傷つけておいて、それでも大人しく自分の腕の中にいる存在に安心するなんて。
いまさら、

(愛しとるなんて、言えへんなぁ…)

口に出せずに焦げ付いた想いは
紛れも無く恋なのに、

もう自分は執着に摩り替えてでしか、彼を手に入れられないのだと気付く。


伝わって欲しい。
伝わらないで欲しい。


「好きやで。柔造」



囁く言葉は、甘くはかなく。





END?
===========
好き過ぎてリバりました。
どっちもOECよね!
勝柔の場合、勝呂が異常なくらい柔造が好き。
柔造の全てが自分のじゃないと嫌で、それが執着だと思い込んでる。
だから初めて手に入れたとき、好きだとか愛してるとか言わなかったと思うんです。
坊も恋じゃないと思ってただろうし。
けど知らないうちに恋をして、それを通り越してしまってたわけで。

あぁこれは愛なんだと気付いたときには、
間違った方法で、好きな人を手に入れていた・と。

柔造も一過性のものだと思ってるからこの関係を続けてる。
だから伝えられない・と。(後書きがないとわからない小説ですね)

まぁ柔造はもともと坊が好きだと想いますがね!
抱いても抱かれてもいいと思ってるよきっと!

そういう事には気付かない鈍感勝呂くんなので、
おおいに悩んだらいいです青少年!

はー楽しかった。
Secret

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