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俺は釈迦じゃねぇ

俺は神じゃねぇ


まして



俺は






LOTAS DREAM






気配は、した。
あいつの気配はいつもバカみたいにその時の感情を表してて。
あーあぁ、これじゃこっちの世界じゃあっという間にあの世行きだぜといつも思いながら、
面倒くさいとかこづけて気配を絶つ術を教えずにいた。

消すではなく絶つ。
匂いも色も、記憶も全て。

それはその人の痕跡が無くなるということ。

たとえそれが一瞬のことであっても、
その人がその人であったという歴史を消し去ること。


あいつはあまっちょろい。
よわっちくて、おさない もろい。
いつまでたっても、せけんしらずのおぼっちゃん


あいつの気配からはいつも、
中途半端に温くなったホットミルクみたいな匂いがする。




幼稚で、
脆弱で、
緩慢。



(でも俺は きっとそんなお前の気配が好きなんだろうな。)


扉一枚はさんだ先で、
乳臭いガキが立っている。


「・・・・・・・・・」


いつもなら隼人が入ってこない限り、俺からドアを開けることはない。
好きに帰って好きに来い。
最終的にお前の判断で先に進めと昔から口をすっぱくして言ってきた。

(おかしいな)

匂いがしない。

隼人の気配であるのは間違いない。
ムラがあるのはいつものこと。直前で少しだけ躊躇うのはもはや習慣。

だが。


温度がない。


色が落ちたような、どこかに忘れてきたような、抜け落ちたような。

たとえるなら、



(奪われたような、)






ゾッとする何かが脳裏をよぎってたった数歩の玄関からドアまでの距離をすがるように詰めた。


バン!




コンクリートの床、
灰色の髪、
冷え切って真っ白の肌


名を呼んでゆっくりをあげた翠を見てやっと、
世界がモノクロではないと知る。



「何やってんだお前」


こんなところで、
そんな格好で、


そんな眼で。



何を言っていいか分からずに、とりあえず呼んだ名前を聞いて、
すがるように歪んだ瞳に、一瞬だけ息を詰めた。

「・・・入るのか入らないのか」

俺の言葉に小さく眼を見開いた後俯く。
ポタリ、銀灰の毛先からまた1つしずくが大きく落ちて。

入るに決まってんだろ藪医者、と小さく言った。



ずぶ濡れのままゆっくりと部屋に入っていく小さな背中を見て心の中だけで舌打つ。


すがるな
たよるな


俺は釈迦じゃねぇ、

俺は神じゃねぇ、



まして


俺はお前を救えねぇ。






ただ、







(傷ついて欲しくないだけだ。)


Secret

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